Creative Zen touch 2 レビュー

Creative 社の Android 搭載 DAP、「Zen touch 2」を購入しましたので、この機種の簡単なレビューを書いておこうと思います。
なお、この機種の8GBモデル(私が購入したモデル)は Creative 公式サイトにて新品とほぼ同等のアウトレット品が4,980円という価格で販売されています*1。この価格で購入してのレビューですので、定価で購入された方のレビューよりはかなり甘くなっているであろうことを念頭に置いておいてください。
 

DAP としてのスペック

音質

オーディオには詳しくないのでよくわかりませんが、悪くない印象です。標準搭載ではありませんがイコライザ機能のあるアプリを使い調整すれば更に良くなります。個人的な体感としては、以前使っていた iPod touch 第三世代よりもこちらの方がずっと良く感じます。なお、本機種には「EP-630」という実売で1800円ほどのイヤホンが標準添付されています。
 

対応フォーマット

Android なのでなんでも ok です。そう、ogg vorbis も!
 

動画再生能力

意外や意外、公式では全くプッシュされていないにもかかわらず動画再生機能がかなり強力です。Full HD の mp4 ファイルもそのまま引っかかりなく再生できてしまいました。ただし、GPU 性能が高いというわけではなく何か再生支援チップを搭載しているようで、標準の動画再生アプリ以外で再生するとダメダメです。とはいえ、そんじょそこらのメディアプレーヤよりはよっぽど快適なのは間違いありません。
 

バッテリの持ち

これはお世辞にもよいとは言えません。無線 LAN・BTオフ、液晶輝度は下から二番目で15秒で液晶オフ、音楽プレーヤ以外アプリは起動せずという条件でも正味10時間行くかどうかといったところです。無線 LAN を起動するとバッテリは驚くべきスピードで減っていきます。
 

サイズ・重量・質感

重量122gと DAP としてはやや重めで、iPod touch などと同水準です。操作面の面積も iPod touch と同じくらいですが、厚みは倍です(笑) 持ちやすいというメリットこそありますが、イヤホンを巻きつけてポケットに放り込んでいることが多い DAP においてこの厚さは少し気になります。
質感は...まあ、これもこれで悪くはないんですが、プラスチッキーでチープな感じです。背面パネルは梨地で指紋はつきにくいのですが、角のあるデザインなので角が削れてあっというまに傷だらけになります。
安いんだしそんなの気にせずガシガシ使えばいいじゃん...というのが正しいスタンスでしょう。ただし液晶保護フィルムは必須です。詳しくは後述。
 

Android 端末としてのスペック

CPU

CPU のクロック変更ソフトによると「ARMv7 Processor rev 5」とのことです。少し古いアーキテクチャですね。800MHz の CPU で、アイドル時は 200MHz までクロックが落ちます。が、800MHz と 200MHz の二つのステップしかないため、ちょっと操作しただけでクロックが 800MHz まで上がってしまいバッテリが浪費されてしまっています。800MHz というと現在の水準からすると力不足の感は否めませんが、OS ががっつりと削られてコンパクトになっていることもあり、DAP + α として割り切って使うのであれば問題を感じることはないと思います。私個人の体感としても「あれ、思ってたより速い」という感じです。
 

RAM

256MB の RAM を搭載しています。これも現在の水準からすると流石に少ないですが、常駐するソフトを最小限に抑えれば案外なんとかなったりします。ただし、web ブラウジングをする際には足かせとなりますので要注意です。この機種を web ブラウジングにも活用した場合は、メモリ消費のフットプリントが少ない「Opera Mini」を利用するとよいでしょう。*2
 

ディスプレイ

480*320px と低解像度で、しかも使いにくい感圧式です。現在ほとんどのスマートフォンに使われている静電容量式が指の有無による電気抵抗の変化から操作を検出しているのに対し、感圧式では「押されているかどうか」を物理的に検出するためどうしても相対的に感度が悪くなってしまいます。本機種のタッチパネルは感圧式としてはかなり高感度に設定してありますが、それでも、「触って操作する」ことを前提とした Android の UI で「押して操作する」のはとても快適とはいえません。さらに、感圧式パネルの表面は押せば簡単にへこむ素材=やわらかいプラスチック製フィルムでできているので保護フィルムの購入と装着は必須です。
 

搭載アプリ

マーケットもマップも入っていません。まっさらです。root 権限を取れば*3いずれも導入できますが、多くのサービスが走ることとなり動作が遅くなってしまいますのでおすすめできません。マーケットの代替としては「1 Mobile Market」という中国のアプリがおすすめです。このアプリはどうやらやめておいたほうがいいようです。詳細は追記参照。
 

無線 LAN

11b/g/n 対応ということですが、あまりいいものではないようです。バッテリ消費が激しいですし、発熱もあります。外出先でモバイル wifi ルータに接続してスマートフォンライクに使うような用途はやめておいた方がよさそうです。どうせ本体のスペックが足を引っ張って 11n の速度なんて活かせないんだから、11b/g 対応のものにすればよかったのに!
 

拡張性

これは素晴らしいです。microSD スロットを搭載しており最大 32GB までの microSDHC カードを利用することができます。ただし、音楽再生アプリによっては microSD スロットからの読み込みに対応していないものもあります。
 

その他

iPod touch と同じく、曲送りボタンや一時停止ボタンがありません。一般的な DAP の操作体系に慣れていると非常に不便に感じます。
・カメラの画質は非常に悪く、しかも特殊な仕様のようでアプリによっては正常な画像を取得できません。
・音量ボタンは小さくやや押しにくいです。
・USB 端子は microB ではなく miniB です。
・コールドブートが高速で、不安定になったように感じたら気兼ねなくリブートできます。
・側面は光沢のあるプラスチックで、指紋はつきやすいですが滑りにくいです。
・本体サイズの割に画面サイズが小さいのがやや気になります。
・横持ちが前提のデザインであるため「戻る」ボタンが(一般的な)左端ではなく中央にあります。もっともこれはすぐに慣れます。
 

総評

ポテンシャルは高いものの完成度は高いとはいえず、どちらかといえばマニア向けのデバイスだと感じます。とはいえ4,980円という驚くべき価格を考えれば大抵のことは許せるでしょう。Android 2.2 搭載なので自作アプリの動作確認用実機としてもまだまだ使えます。誰にでもおすすめできるものではありませんが、ある程度知識のあるマニアな方には断然おすすめです。

追記

「1Mobile Market」についての検索からこのページにいらっしゃる方が多いようですので,1Mobile Market についてちょっと調べて記事を書いてみました。こちらをどうぞ→http://maruyuki.net/1mobile-market/

*1:2012年10月13日現在「在庫あり」表示となっており、在庫はまだ潤沢にある模様です。とはいえ在庫処分という性格の強いセールのようですので、欲しい方はお早めに購入されたほうがいいでしょう。

*2:余談ですが、メモリの少ない環境において Opera Mini は非常に優秀なブラウザで、Safari ではタブ2,3枚が限界の初代 iPod touch でもタブ20枚以上を余裕で開くことができます。Opera Mini では事前に Opera のサーバで web ページを処理してコンパクトにしてくれるためです。

*3:この機種は非常に簡単に root 化できます。検索すればいくらでも出てきますので手順は割愛します。私は「Universal Androot」というアプリを利用しました。

F-12C を EMobile で利用する

EMobile のラインアップには気に入ったスマートフォンがなかったので、docomoF-12CEMobile の回線で利用することにしました。ひとまずその備忘録を残しておきます。
なお、F-12C 以外の docomo スマートフォンは SIM ロックを解除しても EMobile では使えません。F-12C 以外の docomo スマートフォンは、EMobile の利用している W-CDMA 周波数帯(1.7GHz帯)に対応していないためです。秋葉原などでよく売られている海外版端末についてもは 1.7GHz帯に対応しているものはありません。少なくとも僕は知りません。間違えて購入してしまうことのないようご注意を。Micro SIM にしか対応していないために「非対応」 とされていたが周波数帯自体には対応しているという機種が実は結構あったようで,EMobile が Micro SIM の提供を開始すると一気に対応端末数が増えました。docomo スマートフォンEMobile への対応状況についての最新の情報は docomo 公式サイトの表をご覧ください。

F-12C を EMobile の回線で利用するメリットとデメリット
メリット

  • EMobile のラインアップ機種にはない特長を持つ F-12C を低コストな EMobile ネットワークで利用できる!

デメリット

  • 利用できない機能が多い

docomo というキャリアに依存する機能はもちろん使えませんし、EMobile というキャリアに依存する機能も殆どは使えません。現状では EMnet メールの受信さえできません。

  • トラブルが起きた際のサポートが弱い

docomo は、他社 SIM での利用については動作保証をしないという立場をとっています。もしも突然 EMobile の回線が利用できなくなったとしても、docomoEMobile も何もしてはくれません。
(なお、端末の故障の場合は docomo の窓口で修理を受け付けてくれます)


F-12C を EMobile の回線で使えるようにするまで
1. F-12C を入手
既にドコモ回線があるのであれば、機種変更の形で端末を入手するのがいいですが、そうでないなら中古販売業者から「白ロム」の未使用品を購入するのも良いでしょう。
参考までに、私は「ムスビー」という仲介サイトにて「大黒屋」という販売店から端末を購入しました。ネットオークションを利用すればより安く端末を入手できますが、「赤ロム」などのリスクもあります。しっかりした保証を用意している販売店を利用するのが賢明です。

2. ドコモショップにて SIM ロック解除操作をしてもらう(手数料 3,150円)
こちらがすべきことは簡単、購入した端末と身分を証明できる書類、3,150円を持ってドコモショップへ向かうだけです。
操作自体はあっという間ですが、(ショップにもよるのでしょうが)順番待ちの時間がかなりかかります。充分な時間をとった上で向かったほうがよいでしょう。

3. APN 設定
これで F-12C は無事に SIM ロックフリー仕様になりました。あとは EMobile の SIM カードを挿し込むだけ......ではないんですね、これが。
EMobile のネットワークを利用するにあたって、事前に APN(Access Point Name)を設定する必要があります。
といってもまあ、これも実に簡単な作業です。
設定については「にゃののん日記」さんで詳しく解説されています。(emb3.ne.jp だけ設定すればとりあえず使えるようになります)

4. できあがり!

ソヴィエトのパンケーキ Industar 50-2

どんな政治的自由があっても、それだけでは飢えたる大衆を満足させない。
―― V.I.レーニン

かつて、ソヴィエト連邦という国がありました。
共産主義を標榜し、資本主義の大国・アメリカ合衆国と鋭く対立した軍事国家。
そんなソ連が民生用のカメラを作っていたということは、写真を趣味とする人にもあまり知られていません。
今回紹介する「Industar 50-2」はそのうちの一つ。ソ連製のレンズです。

政権奪取に成功したソ連共産党は、工業の発達によってこそ国家を豊かに出来ると考え、ひとまず急速な工業化によって国力の拡充を図ろうとしました。
カメラの生産もその一環として始まったのでしょう。戦前には既にドイツ製カメラ「Leica」のコピー商品が生産されていたようです。
とはいえ、光学機器産業は当時の先端分野。技術のないソ連では充分な性能を持つレンズを作ることなどできるはずがありませんでした。

この状況を一変させたのが、第二次世界大戦での戦勝です。
ソ連の占領地域の中に、ドイツの名門カール・ツァイス社が本拠地を置くイエナ市があったのです。ソ連は“賠償”としてツァイス社の技術者や資料、生産設備を収奪し、遠くロシアの地まで運んでゆきました。
(なおこの直前、ツァイス社の高度な工学技術がソ連の手に渡ることを恐れたアメリカが、軍を投入し多くの技術者を半強制的に西側(アメリカ占領地域)へと移住させたとされています。ツァイス社の技術がいかに進んだものであったのかを物語るエピソードです)

ドイツ製の設備を使い、ドイツ人の技術者が、ドイツ企業の製品を作る。これがソ連の光学機器産業のはじまりでした。
やがて技術者たちは帰国を許されますが、ツァイス製品の「コピー商品」の生産はそれからも続きました。

さて、これが Industar 50-2 です。やはりツァイス社のレンズ「テッサー」と同じレンズ構成になっています。
「Industar」という、如何にも「工業!」といった感じのネーミングからはソ連の工業化にかける意気込みが伝わってきますね。
いつのまにやら増えてゆき、気付いたときには三本目......

えらくコンパクトな外観がかわいらしいです。こうした鏡胴の短いカメラレンズは、パンケーキのように薄いレンズということで“パンケーキレンズ”と呼ばれているようです。
ソヴィエトのパンケーキ。こう、物々しい単語と気の抜けた単語が並ぶとなんだか可笑しく感じますね。

見た目こそちゃちですが、写りはなかなかバカに出来ないものです。逆光に弱いのが玉に瑕(きず)ですが、まあ何十年も前のものなので仕方ありませんね。

是非フードをつけて使いたいレンズです。このレンズに合うフードは市販品でも入手できますが、黒色のフィルムケースなどを現物合わせで加工して使うのもおすすめです。
(上:フード未使用 下:フード使用)

かなりの数が供給されたようで、中古価格は比較的安価です。見た目の面白いレンズであるだけでなく、普通に「使える」レンズでもあるので、あやしいソヴィエトカメラの世界をちょっとだけ覗いてみたい方にもぴったりです。

※ 筆者はべつに赤い思想の持ち主というわけではありません。ただの趣味人です。念のため。

KMZ Industar 50-2 3.5/50 + NEX5(4枚目以降)